SWATCH新本社ビル

ビール・ビエンヌ/スイス

スイスを代表する時計メーカーであるSWATCH(スウォッチ)は、2019年10月に、スイスのビールに新本社ビルをオープンしました。設計を担当したのは、日本人建築家の坂茂氏。建設に約5年の歳月を要した世界最大級の木造建築です。


スウォッチ・グループは、2007年に竣工した東京・銀座にあるニコラス・G・ハイエックセンターの設計で、坂氏と初めてコラボレーションし、続く2011年に、スウォッチ新本社ビルおよびそれに併設するオメガ・ファクトリーとミュージアム・イベントスペースのCité du temps(シテ・ドゥ・タン)の設計コンペティションで、再び坂氏の設計を選びました。

特徴的な美しい曲線を描いたシルエットのスウォッチ新社屋は、全長240m、幅35m、高さは最も高い位置で27mにおよぶ5階建ての建物です。従来のオフィスビルの概念を覆す斬新なデザインでありながら、建物の周囲を取り巻く街の環境にしっくり調和するよう設計されています。

広大なヴォールト形状をしたファサードは、木造のグリッドシェル構造が採用されています。エコロジカルで持続可能な観点から選ばれた木は、スイス産の木材のみが使用され、1,997㎡におよぶ使用木材量は、スイスの森で2時間足らずで再度成長する木材量に相当するそうです。木は柔軟な建材で高い精度の加工が可能なため、最新の3Dテクノロジーを用いて4,600本のビームの個別の正確な形状と位置が決定されました。また、すべての建物は地下水を利用した冷暖房や太陽光発電システムにより、二酸化炭素排出量の削減に貢献しています。

スウォッチ本社屋の延べ床面積は25,000㎡で、スウォッチ・インターナショナル社およびスウォッチ・スイス社のすべての部署が入っています。そのオフィススペースに、ゴールデンイエローのUSMハラーの収納キャビネットがエリアを軽く仕切るように設置され、それぞれのデスクの下にはワゴンが据えられました。

また、通常のオフィススペースに加え、顧客にも開放されたカフェテリアや休憩スペース、プライバシーを尊重した「アルコーブ型キャビン」、どこにも通じていない「読書用階段」など、さまざまなユニークな共有エリアが建物全域に設けられています。

スウォッチ社新社屋は、最新技術を駆使した最先端の建築とワークスタイルが環境保全と両立可能なことを示しています。



(Photograph: The Swatch Group Ltd.)