HAROSHI / アーティスト

葛飾区/東京

スケートボードをモチーフにした彫刻により、国内はもちろん海外でも広く知られているHAROSHI(ハロシ)。実際にスケーターが使用したボードを何枚も接着してから、手作業で削り出したユニークな作品は、アートシーンでの評価を年々高めています。東京の下町にある彼のスタジオは、その素材になる数百枚ものスケートボードが積み上がり、さまざまな工具や工作機械が並んでいます。一角には、自作した本格的なスケートランプも。HAROSHIさんのライフスタイルが、空間そのものから伝わってきます。


「当時、日本有数の大きなスケートパークが近所にあったので、12年前に引っ越してきました。このあたりは今も町工場が残り、ものづくりをする人が多く住んでいるところ。スタジオの大家さんもアートに理解があり、すごく活動しやすいです」

スタジオの2階、デザインや打ち合わせのためのスペースは、やや雑然としながらも、ちょっとしたストリートアートのギャラリーのよう。その中で、USMハラーに飾っているのは、HAROSHIさんにとって特別なものばかりだと言います。


「スケートボードを削って作品をつくるので、どうしても部屋に粉が積もってしまうんですが、USMハラーはパーフェクトな状態でディスプレイできます。この中に置くと、見え方が変わりますね。USMハラーは、10年以上前からインテリア雑誌などで見て知っていました。以前は小さい棚を使っていましたが、去年、パーツを買い足して拡張したんです」


キャビネットの中には、コレクターに大評判の「BE@RBRICK カリモク HAROSHI 400%」、敬愛するアーティストのジョイス・ペンサートによる立体作品、交流のある広田彩玩所のソフビ人形......。また友人が近所で拾ったキノコ型のオブジェもとても気に入っているそうです。

「壁に掛けているイームズのレッグスプリントは、第二次大戦の頃にプライウッドでつくられた、骨折時の足の添え木。よくできたプロダクトだと思います」


現代のスケートボードもプライウッドでできているので、そのレッグスプリントの延長線上にあるのだそうです。もう一方の壁に掛けている、1960年代から1980年代にかけての古いスケートボードは、あえて使い込まれたものを時間をかけて、少しずつ集めてきました。


「スケボーも、ソフビの人形も、新品よりも人が遊んで使い古されたもののほうが素敵だと思うのです」


こうしたHAROSHIさんのセンスと、USMハラーのデザインは、相入れないように見えて不思議な相性の良さがあります。

「ルーヴル美術館の有名な『サモトラケのニケ』だって、倉庫に置いてあったら誰も注目しないけれど、美術館の天井が高く広い空間の階段の正面に展示されると神々しい。不完全な作品の美しさをどう引き出すかがディスプレイのキモなんです。僕がUSMハラーに入れている作品も同じで、この家具のもつ緊張感が作品にとてもいい影響を与えていると思います」


またHAROSHIさんは、自身で表現するものについて、こう説明します。
「完璧なデッサンのような彫刻は、勉強したり練習を重ねれば誰でもそれなりになってくると思うんです。でもうまくなればなるほど、僕にとっては退屈なものになっていきました。僕の好きなものは、曖昧な不完全さの中に温かみや感情を見出すことができるものです。もっと自分にしかつくれないものは何なのか、それを最近はとても考えています」

HAROSHIさんがつくり、また収集するアートは、一般的な規範からすると「完璧でない」。そんな作品にこそ、水平と垂直で構成され、構造も機能も完璧なUSMハラーがふさわしいのだと彼は言います。


「実用的なデザインというのは、すごいですよね。機能があり、強度や耐久性があり、何より美しさもある。何十年、何百年と色褪せることのないものだと思います」

 HAROSHIさんの公式ホームページはこちらから ⇒ http://www.haroshi.com/


 


( Text by Takahiro Tsuchida | Photographs by Tadahiko Nagata )