會澤大志 / ADAAC CEO、建築家
東京
大学で建築を学んだ後、メディアアートで知られるチームラボの建築部門を経て、家業である會澤高圧コンクリートの副社長に就任。並行してグループ会社としてADAACを設立し、領域を超えて活動する會澤大志さんはUSMハラーの愛用者です。ADAACのオフィスで、決して型にはまることのないデザインの見方を聞きました。
ADAAC(アダーク)とは、「Aizawa Designers and Architects Collective」の頭文字。1935年に北海道で創業した會澤高圧コンクリートのグループ会社であり、デザインや建築などの専門家がチームを組んだ、これまでにないタイプのチームです。その活動について、ファウンダーの會澤大志さんはこう説明します。
「設計事務所ではありますが、建築やデザインだけでなく、テクノロジー、構造、音響などいろいろなジャンルを突き詰めたスペシャリストの集団です。それぞれに経験が豊富で、同じ熱量をもった仲間が集まっています。おもしろい人間ならどんどん一緒にやりたい、そんな気持ちで活動してきました」
會澤さんが大学時代に建築を学んでいた頃、ひとつの出会いがありました。現在、パノラマティクスを主宰する齋藤精一が設計授業の講師として担当するグループに入ったのです。建築のバックグラウンドをもち、Perfumeのステージの演出なども手がけるライゾマティクスの代表取締役である齋藤さん。講師の多くが正統派の建築に向き合うなか、最新のテクノロジーやクリエイションに精通した彼の活動に、會澤さんは大きな刺激を受けます。
「建築の道を進んでこういうことをしている人がいるんだと知り、建築、意匠、テクノロジーのミックスにのめり込んでいきました。建築のファサードの歴史的な意匠性を研究し、プロジェクションマッピングにより再解釈するという論文も書いています。そんな時期にメディアアートで注目されつつあったチームラボの取り組んでいる『超主観空間』という考え方に出会い、そこに共感して、建築部門を担当するチームラボアーキテクツという会社の門を叩いたのです」
チームラボアーキテクツで約5年間を過ごした會澤さんは、2020年に家業である會澤高圧コンクリートで働き始めます。翌年にADAACを設立し、新たなビジョンをもって仕事に取り組むことになりました。
「チームラボでデジタルを使ってさまざまな体験をしたので、そのうえで會澤高圧コンクリートとコンビネーションして、まだ誰もやっていないことをデザインしようと思いました」
會澤高圧コンクリートの福島RDMセンターもそのひとつで、高品質のプレストレストコンクリートを使い、柱のない大空間をつくり出しています。
ADAACのオフィスを開設するにあたり、會澤さんが選んだのがUSMでした。それも空間のほとんどをUSMハラーで構成し、インテリアそのものになっています。
「自由度が高く、シンプルで格好いい家具として、チームラボにいた頃から気に入っていました。その存在に1度気づくと、ドラマの中など本当にいろんなところに使われていますよね。USMハラーで空間全体をつくってみたいとずっと思っていたんです」
建築やデジタルのバックグラウンドがあるからこそ、導入にあたってはフィーリングを第一にしながら自身で3Dの構造を考えたという會澤さん。赤い椅子を使うことを意図して、パネルのカラーリングは黒で統一しました。
「自分の仕事場ですが、何度見ても格好いいなあと思います。USMハラーの機能の高さはもちろん理解していますが、そこから入っていないのもこの空間の特徴かもしれません」と會澤さん。まず全体の形を決めてから、そこに機能を当てはめていくような考え方を、メンバーを交えて議論していったそうです。
「モジュールで構成されたものならではの美しさがありますよね。そしてコンクリートの建築でも同じことができると思います。コンクリートは、打ち放しの建築などを別にすると、あまり見せたくないものとされるのが一般的。しかしUSMがシンプルで機能的なのに格好いいように、コンクリートも新たな価値をつくれるはずです。安定している反面、最も進化が遅い業界なので、そこを突き抜けていきたいんです」