USMのモジュラーシステムは、建築原理にそのルーツがあります。

クロムメッキのスティールチューブとボールコネクターを連結したフレームに、メタルパネルを組み合わせて構成するUSMハラーは、50年以上にわたって無限の可能性を提供してきました。この独創的なモジュラーシステムが、どのようにして誕生したか知っていますか?


USMは、1885年にスイス・ベルン近郊のミュンジンゲンで、小さな家族経営の錠前業から始まりました。1960年代初頭に、USMの方向性を変革し近代化へと舵を切ったのは、創業者の孫で現在の経営者の父親であるポール・シェアラーでした。

建築とデザインに傾倒し、ミース・ファン・デル・ローエやル・コルビュジェを崇拝していたポールは、1961年、当時革新的な作風で知られていたスイス人建築家フリッツ・ハラーに、今までにないフレキシブルな構造の新工場とオフィスの設計を依頼しました。

フリッツ・ハラー(1924-2012)は、20世紀後半のスイスにおいて最も影響のあった建築家の一人です。ソロトゥルン派と呼ばれる建築家グループのメンバーであり、建築理論家でもありました。彼を一躍有名にしたのは、一般の住宅やオフィスのための「MINI」、より大きな建物のための「MIDI」、産業建築物のための「MAXI」という、必要に応じて建物の広さを拡大・縮小できる3つの鉄骨モジュラー建築システムの考案でした。

フリッツ・ハラーのフレキシブルな建築原理は、ポール・シェアラーの期待にまさに的確でした。「MAXI」システムに基づいて設計された新工場は、1965年に完成します。その隣には、同様の建築原理をさらに小さな規模に応用したパビリオンと呼ばれるオフィスも同時に建てられました。

数年後、ポールはハラーに自宅の設計も依頼します。これは「MINI」システムに基づいて設計され、工場の敷地から数メートルの場所に建てられました。1969年に完成したこの高床式のカラスと鉄骨の建物は、現在もなお当時の姿のまま残っています。

USMの新工場とオフィスの建設が進んでいくなか、ポールは、当時市場に出回っている家具が昔ながらの木製の家具ばかりで、ガラスとスティールからなる最新式の建物にはおよそ似つかわしくないことに気づきます。そこでポールは、モジュラー建築システムに合う家具の開発をフリッツ・ハラーに持ち掛けます。こうしてモジュラー式システム家具が誕生し、1965年に特許を取得しました。


当初は自社のオフィス用として開発されたシステム家具でしたが、独創的なスティール製家具が並ぶUSMの新オフィスは数々の建築雑誌に掲載されました。1969年、ロスチャイルド銀行がパリにオープンする新オフィス向けに初の大量注文を受けたことをきっかけに商業販売への道を開くことになり、ポールとハラーはこのシステム家具を「USMハラー」と名付けました。